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第4回『アオサギ』

『アオサギ』

最終更新日2026年4月15日

ほごくLOVEふぇす第4回

​ほごくLOVEふぇす2025のテーマである『アオサギ』について、当日の展示内容の一部を紹介します。

基本情報

 アオサギArdea cinereaは鳥綱、ペリカン目、サギ科、アオサギ属に属します。英語ではGrey Heronと言い、学名と合わせてどちらも「灰色のサギ」を意味します。分布はユーラシア大陸からアフリカ大陸まで、温帯から熱帯にかけて広く棲息しています。日本で見られるのは亜種Ardea cinerea jouyi Clark, 1907です。日本では北海道から九州にかけては一年中見られる留鳥として、琉球列島では冬になると姿を見せる冬鳥として暮らしています。水辺を好み、湖や川、水田、干潟などで魚や小動物を採餌します。夕方になると仲間たちと川の中州などに集まって眠ります。かなり神経質な性格で、人の気配がするとつい驚いてすぐに飛び立ちます。

特徴と体色の変化

 雌雄同色で、全体にスマートで細長い体型をしています。日本で見られるサギの仲間で一番大きい種です。

全長 90–98 ㎝

翼開長 115–175 ㎝

体重 1,000–2,000 g

 幼鳥の体色は、頭からの背面は褐色がかった灰色で、頭の黒味は少なく、背や胸の飾り羽はありません。上嘴が黒っぽいですが、成鳥に近づくにつれて黒味がなくなっていきます。

 繁殖期になると異性にアピールするために派手な体色に変わり、嘴と足が赤くなります。どちらも通常は黄褐色です。

食べ物

 水辺や水の中に入り、じっと立ち止まって待ち伏せしたり、ゆっくり歩いて魚などを捕らえます。昆虫、両生類、甲殻類、小型の哺乳類や水鳥までなんでも捕食します。餌を見つけるとS字形に曲げた首を瞬間的に伸ばし、嘴で挟み捕ったり突き刺して捕らえます。単独で水辺に分散して採餌することが多く、群れで餌を追い立てることはありません。

​繁殖、子育て

 樹木の頂部やヨシの上などに直径1m近くの大きな巣を作ります。巣の外側は太い枝で作られ、産座には細い枝や葉などを敷いて卵やヒナが傷つかないようにしています。一夫一妻で繁殖し、産卵期は4月上旬から5月中旬です。産卵は数日おきで、抱卵期間は25~26日、雌雄交代で行います。卵サイズは長径64mm・短径43mm程度で、一服卵数は3~6卵です。育雛も雌雄共同で行い、50~55日で巣立ちます。

​行徳鳥獣保護区での暮らし

 保護区のアオサギは1年中観察できます(一部の個体は季節移動しています)。営巣が初めて確認されたのは2007年で、カワウのコロニー内での営巣が確認されました。2010年以降は毎年観察されており、3月~6月にかけて営巣・繁殖しています。多い年では50巣以上が確認されており、年によっては広いヨシ原のある北池で営巣していたこともあります。しかし近年はカワウの増加や樹木の枯死などによって、営巣できる場所が限られ、営巣数が減ってきています。

標識調査

 標識調査(バンディング)とは、捕獲した野鳥に足環や首環などに番号や記号のついた“標識”を装着して放し、その鳥を再捕獲したり観察したりすることで、鳥の移動経路、寿命、年齢、繁殖状況などの生態を明らかにする調査です。NPO行徳自然ほごくらぶでは、環境省や千葉県、山階鳥類研究所など関係機関から許可を受け、行徳鳥獣保護区などで標識調査を実施しています。

 保護区のアオサギについては、巣内にいるヒナを手捕りし、右足脛に環境省リング、左足脛にカラーリングを付けて巣に戻します。カラーリングは数字とアルファベットが大きく刻印されており、双眼鏡や望遠鏡での個体識別が可能となります。保護区では2010年からアオサギの標識調査を開始しました。2017年以降は毎年調査を実施しています。2010年から99羽のヒナに標識し、再観察例として、2025年9月末まで41個体が再観察されました。そのうち28個体は保護区のみの記録でした。他地域では水元公園や市川市内の大柏川第一調節池などで観察されていますが、大阪府や宮崎県といった遠方に移動している個体もいることがわかってきました。

  • アオサギの寿命

青00Cと02Cは、2014年にヒナで捕獲放鳥されました。2025年現在も保護区や谷津干潟で観察されており、放鳥後11年以上経過しています。これは日本での最長寿記録となっています。

  • 青00Cの移動

 2014年に捕獲・放鳥され、数年後に谷津干潟で確認されました。近年、約900km離れた宮崎県で越冬することがわかりました。

千葉県のアオサギ

 千葉県内にあるアオサギが営巣しているコロニーは24か所確認されており(2025年6月現在)、規模の大小はあるものの2006年には8か所、2015年には17か所と年々増加していますが、ここ数年はやや落ち着きつつあるようです。ただアオサギは他のサギとともにコロニーを形成するだけでなく、アオサギのみで単独~少数で営巣することもあるので、まだ知られていない営巣地があるかもしれません。

傷病鳥としてのアオサギ

 記録のある1991年から2025年の35年間の間に、怪我をした98羽のアオサギが野鳥病院に運び込まれました。

  • 保護場所

 市川市内が大半を占め(45羽)、習志野・浦安・船橋・千葉市と続きます。これは他種でも似た傾向で、野鳥病院が市川市にあることが大きいと考えられます。

  • 保護理由

 多いのは衝突による怪我です。骨折がほとんどで、翼(36羽)や脚(11羽)、翼・脚両方骨折のケース(5羽)もありました。大きな外傷は無くても、内臓や腰椎に損傷があり立てない個体も14羽と少なくありません。体重1kgを越える大型の鳥なので、衝突や落下した際のダメージが大きいと考えられます。衝突以外では痩せて衰弱した個体(11羽)もいました。若い個体が目立ち、経験不足で餌がうまく採れていなかった可能性があります。

  • その後

 放鳥できた個体は26羽でした。15羽は入所1か月以内に放せており、最長は1年8か月後でした。死亡のうち、49羽は入所一週間以内に力尽きています。脚骨折の個体は全て死亡しています(安楽殺を含む)。

  • ​野鳥病院での暮らし

 野鳥病院での食べ物は冷凍のコノシロの切り身やアジです。冷凍エサではビタミンが不足してしまうため、ビタミン剤をエサに添加して与えています。水浴びは毎日するわけではないようで、2~3日に1回程度の様子です。水浴びをすると紛綿羽(ふんめんう)の粉が浮くため、プールの水面に粉の膜が浮きます。

 アオサギはその身体の大きさとは裏腹にかなりの臆病者で、体重測定のために捕獲するとそのたびに必死の叫び声をあげます。またスタッフが部屋に入っただけで慌てふためき、外に逃げようと禽舎の金網に脚を引っ掛けて暴れ、指や爪先から出血してしまうことがありました。そこでアオサギのために禽舎の網を金網から比較的柔らかいナイロンネットに変更し、さらにジョイントマットを当てて怪我防止策を講じています。人に対しては臆病な反面、他の鳥たちにはとても態度が大きく、鋭い嘴と長いリーチで威嚇します。

世界のアオサギ属

​ アオサギ属Ardea は世界で16種が知られ、汎世界的に分布しています。ここでは一部の種を写真とともに紹介します。

参考文献など

●参考文献

  • Brazil, M., 2018. Birds of Japan. 416 pp. Bloomsbury Publishing, London.

  • Gill, F., D. Donsker, & P. Rasmussen (Eds). 2025. IOC World Bird List (v 15.1).

  • 叶内拓哉・安部直哉・上田秀雄,2024. 新日本の野鳥.719 pp. 山と渓谷社,東京.

  • 小海途銀次郎・和田 岳,2011. 日本鳥の巣図鑑小海途銀次郎コレクション.391 pp. 東海大学出版会,神奈川.

  • 公益財団法人山階鳥類研究所,2025. 2023年鳥類標識調査報告書.77 pp. 環境省自然環境局生物多様性センター,山梨.

  • 中村登流・中村雅彦,1995. 原色日本野鳥生態図鑑水鳥編.304 pp. 保育社,大阪.

  • 日本鳥学会.2024. 日本鳥類目録改定第8版.506 pp. 日本鳥学会,東京.

  • 内田 博,2019. 日本産鳥の卵と巣.228 pp. まつやま書房,埼玉.

  • 吉安京子・森本 元・千田万里子・仲村 昇.2020. 鳥類標識調査より得られた種別の生存期間一覧(1961–2017年における上位2記録について).山階鳥類学雑誌,52(1): 21-48.

●写真および情報提供(敬称略、アルファベット順)

​岩浦良多、久保田朋秀、久保田陽子、長尾奈緒美、中村麻衣(あいねすと(市川市行徳野鳥観察舎))、時任純代

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