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第3回『ザトウムシ』

​『ザトウムシ』

最終更新日2026年4月15日

ほごくLOVEふぇす第3回

​ほごくLOVEふぇす2023のテーマである『ザトウムシ』について、当日の展示内容の一部を紹介します。

ザトウムシは何の仲間?

 ザトウムシは動物界、節足動物門、クモガタ綱においてザトウムシ目を形成し、世界で約6,300種(日本では約80種)が知られています。クモガタ綱の中ではダニ 55,000種、クモ 44,000種に次いで3番目に種数が多いです。

ザトウムシは古生代から同じ姿

 クモガタ類の起源は古く、多くの目の化石はデボン紀から出現しており、ザトウムシではデボン紀初期(約4億年前)から確認されています。多くの昆虫の化石は石炭紀以降にしか見つかっておらず、ハチやチョウは中生代以降にならないと出現しません。

ザトウムシの体の特徴

 体は丸くずんどうで、脚は細長いです。歩行には第1、3、4脚を使い、最長の第2脚は感覚器官としての役割が大きいです。触肢の下面に長い棘が並び、先端2節が鎌状になって餌捕獲に適した構造になっている種もいます。

~ザトウムシの名前の由来~

 漢字では“座頭虫”となります。座頭とは室町~明治時代まであった男性盲人の階級の一つです。ザトウムシは1対の眼を持ち、明暗は感知しますが、視力はよくなく、歩くときには最長の第2脚を前方に伸ばして周囲を探るような姿勢をとります。その姿が前方を杖で探りながら歩く姿に似ることから座頭虫と呼ばれるようになりました。

昆虫、クモ、ザトウムシの違い

ザトウムシの生活

 夜行性で、昼間に見ることは多くありません。主に森林などに棲息し、乾燥には弱いです。年1化(1年に1世代)で、地中や石下、コケの中などに産み付けられた卵で越冬するものが多いです。世界では親が卵や幼体を守る種や、巣を作って卵を保護する種も知られています。幼体は親とほとんど同じ姿で、6回ほど脱皮を繰り返して成長します。

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~ザトウムシは何を食べる?~

 捕食性で小型の昆虫やクモ、陸貝、ミミズなどを食べます。ただし強力な武器や毒は持たないため、素早い生き物や硬い生き物を捕らえることは難しいです。生きた動く動物しか捕食しないクモと異なり、新鮮であれば死体でも食べ、地面に落ちた果実なども食べます。他にも動物のフンや、キノコ、人間が食べこぼした米粒などにも集まり、何でもよく食べます。​

​​~ザトウムシの交尾~

 クモガタ類のほとんどは雄に陰茎がありません。精子の移動は精包の受け渡しや、間接交尾(雄が触肢先端など精子の移動に特化した装置に精子を移し、それを使って雌の生殖口に精子を送り込む方法)で完了します。一方、ザトウムシの雄は陰茎を持ち、真正の交尾が見られます。交尾器は体の前方に開くため、交尾は雌雄の体が向かい合わせになる姿勢でおこなわれます。

ザトウムシの飼い方

 足場として生葉つきの枝やシダの葉を入れましょう。幼体を飼うときは脱皮できるように適度な大きさの木片などを置くとよいです。容器は乾燥しないように密閉できる蓋が必要です。水をよく飲むので、霧吹きやピペットで毎日散水します。ただし体の小さい幼体は水滴の表面張力に脚をとられて動けなくなり死亡することがあるので注意が必要です。暑さに弱いため夏はエアコンが必須で、直射日光も厳禁です。基本的に共食いはしないので、同じ飼育容器に複数個体を入れて問題ありません。餌はカロリーメイト、食パン、ビスケット、魚肉ソーセージ、チーズなど何でもよく食べます。産卵をさせる場合には昆虫の死体なども与えた方がよいでしょう。

~採集した個体の持ち帰り方~

 足場として容器に生葉つきの木の枝を入れます。ザトウムシは乾燥に弱いため、生葉を入れておくことで蒸散により湿度を保つことができます。容器はビニール袋などで問題ありません。

行徳鳥獣保護区にいるのは…?

ヒトハリザトウムシ(カワザトウムシ科)
Psathyropus tenuipes L. Koch, 1878

 体長5~6mm 。腹部第2背板に1本の針状突起があります。北海道、本州、四国、九州の海岸や河川の感潮域に棲息しますが関東地方以北では内陸で見られることもあります。西日本では崖地と砂浜がセットになった自然海岸の岩陰で見つかることが多いです。集合性が強く、日中は多数の個体が密集します。生体は7~11月頃まで見られますが、少数が2月頃まで生き残っていることがあります。

体をよく見てみよう!

様々なザトウムシ

ザトウムシについてもっと知りたい!

ザトウムシ ところ変われば姿が変わる森の隠遁者

鶴崎展巨[著]

2,400円+税 四六判並製 224頁+カラー口絵8頁 

2024年7月刊行  ISBN:978-4-8067-1667-9

 2024年の夏、ザトウムシの研究者によるザトウムシの本が出版されました。本展示ではたくさん参考にさせていただきました。展示で紹介させていただいた内容はザトウムシの魅力のほんの一部です。ザトウムシの面白さはこの本の第3章に大きくページが割かれているように、「地理的変異と分布」にあります。ザトウムシは歩いて移動することしかできず、山や谷、川などの障壁があると移動分散が制限され地理的に隔離されるため、変異や種分化が生じやすいグループです。また少々難解ですが、染色体にも様々な変異があり、他の生物では見られない特異な現象が生じています。もっとザトウムシを知りたい方、種分化の面白さについて触れてみたい方は、ぜひ読んでみてください!

参考文献

  • Dunlop, A.J., L.I. Anderson, H. Kerp, & H. Hass, 2003. Preserved organs of Devonian harvestmen. Nature, 425: 916.

  • Garwood R.J., J.A. Dunlop, G. Giribet, & M.D. Sutton, 2011. Anatomically modern Carboniferous harvestmen demonstrate early cladogenesis and stasis in Opiliones. Nature Communications2: 444.

  • Giribet, G., & G.D. Edgecombe, 2019. The Phylogeny and evolutionary history of Arthropods. Current Biology29: R592–R602.

  • 島野智之,2018. なぜダニ類はクモガタ類の中で最も種数が多いのか?.タクサ (44): 4–14.

  • 鶴崎展巨,2024. ザトウムシところ変われば姿が変わる森の隠遁者.222 pp. 築地書館,東京.

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